古本屋のオヤジ

古本屋のオヤジ

古本屋に行くのが好きです。

普通の本屋さんじゃなくて、古本屋さん。仕事の合間など時間が出来ると、いつも近所にある古本屋にふらりと立ち寄ります。別に何を買うわけじゃないんですけど、古本屋さん独特の雰囲気というか、空気というか、そういうのが好きなんですね。

ブックオフのような大型チェーン店はNGです。

ああいう店は扱っている本は古本かもしれませんが、佇まいは普通の本屋さんと変わりません。面白みがないんです。

昔住んでいたところの商店街に小さな古本屋さんがありました。

ここの主人が変わった人で、客が入ってきても顔を上げず、ずっと本を読んでいるんです。

「いらっしゃい」なんて気の利いたことはいいません。ただ、レジの奥に座って、黙って本を読んでいます。客がレジに行くといかにもしぶしぶといった感じで立ち上がり、愛想なく勘定を済ませます。

もちろん、「ありがとうございました」なんて言いません。勘定が済むと黙ってレジの奥にもどり、また、本の続きにもどります。

本が好きで、本に囲まれた生活がしたいから古本屋さんをはじめた。

そんなタイプの典型的な人物でした。そういう、ある意味、自分の趣味を仕事にできるってうらやましいですよね。ここのご主人にとっては、一日中、本を読んで暮らす生活に憧れていて、ようやく手に入れた夢のお店だったのでしょう。

そんなご主人から一度だけ、声をかけられたことがありました。

当時、寺山修司に凝っていて、彼の本を片っ端から読み漁っていたんです。その日も、何気なくその古本屋に入ってみると、未読の寺山修司の本が新着の棚に置いてありました。

私は迷わずその本を手に取ると、レジへと向かいました。ご主人はいつものように愛想なく勘定を済ませ、私は買ったばかりの本を手に店を出ようとしました。

すると突然、

「澁澤龍彦もいいよ」と声をかけられたんです。

私はビックリしました。あのオヤジがしゃべった。澁澤龍彦のことよりも、そのことで頭がいっぱいになって、「あ、はあ」と、間抜けな返事しかできませんでした。

それだけ言うと、ご主人は別にオススメの澁澤龍彦の本を持ってくるわけではなく、また、いつものようにレジの奥に座って本を読み始めました。

それからしばらく、私は仕事が忙しくてその古本屋には行けませんでした。そして数ヵ月後、久しぶりに店の前を通ったんです。

すると、「長い間、お世話になりました」と一枚の張り紙がシャッターに。どうやら、夢だけでは食べていけなかったみたいです。

その後、私は澁澤龍彦を一度も読んだことがありません。

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手紙を書くことの大切さ

先日、主人の誕生日に手紙を書いてみました。

と言っても、金欠でプレゼントを買うことが出来なかったので

何か代わりになるものが無いかと考えて

「マッサージ券」と「手紙」を渡すことにしたんです。

(私はリラクゼーションサロンで働いていた元セラピストなのでマッサージは一通り出来ます)

と、まぁ何とかタダで誤魔化そうという思惑みえみえのプレゼントでしたが

意外にも主人が「手紙」をすごく喜んでくれていました。

思い起こせば約10年ほど、

主人には手紙という手紙は書いていませんでした。

元々手紙を書くことは大好きで

まだお付き合いしている頃はラブレターを何通も書いていました。

そのころは私も学生だったり、

就職しても実家住まいだったので手紙を書く時間と余裕があったのでしょう。

今はメールという便利なものも普及していますし

遠いところに住んでいても顔を見ながら電話で話すことも簡単です。

よく考えると、今誰かに手紙を書くなんて事は

年賀状に一言添える以外にほとんど無くなってしまいました。

そんな中、久々に書いた手紙が旦那様へのもの。

内容は、普段言えない感謝の気持ちと

仕事で悩んでいる主人への励ましの言葉だったと思います。

それに、3歳の息子の書いた主人の似顔絵を添えて

手作りの封筒に入れて渡しました。

(これも経費削減のため・・・)

考えてみると、感謝の気持ちや励ましの言葉なんて、

普段の会話で主人に伝える事なんてありませんでしたから、

改めて手紙で渡されると感動するのも分かる気がします。

実は義母が手紙大好きで

数名の友人とほぼ毎日文通のように手紙のやりとりをしているのです。

メールも使わない世代なので手紙しか無いのかなと思っていたのですが、

よく新聞の切り抜きや雑誌のコラムのコピーを取っておいて

「これは○○さんに」

と、手紙に貼って送っているのを見ていました。

手紙って、字を書いて、封をして、切手を貼って出すという

なんでも簡易化された現代において

非常に手間のかかる伝達方法ではありますが、

それだけ相手を想ってする作業でもあるんですよね。

手間をかけるから相手の事が記憶にも残るので

新聞のコラムを読んでも

「あの人に見せてあげたい」

と、相手が心に浮かんだりするんですね。

そういう相手を大切にする作業って素敵だなって

主人に手紙を書いて以来思うようになりました。

学生時代の友人や最近会っていない友達に

手紙を書いてみようかなと思っているところです。

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